自由都市と自治都市の違い~神聖ローマ帝国を例に解説~

神聖ローマ帝国を学んでいるとよく出てくるのが「自由都市」とか「自治都市」って言葉。
どちらも「都市がある程度自分で物事を決めてる」という意味では似てるんですが、歴史的にはちゃんと使い分けがあるんです。
特に神聖ローマ帝国では、この2つの言葉にはっきりした違いと役割がありました。
この記事では、自由都市と自治都市の違いを、神聖ローマ帝国の具体例とともにわかりやすく整理していきます!

 

 

自由都市と自治都市の共通点と違い

この2つの都市タイプは、どちらも「普通の都市」より自立性が高いんですが、ポイントは誰に属しているか、誰から自由なのかという点なんです。

 

共通点:どちらも“ある程度自分で政治ができた”

自由都市も自治都市も、

 

  • 独自の市参事会(市議会)を持ち
  • 市長を選び、裁判や徴税を実施できる
  • 城壁を築き、自衛武装が許されていたこともある

 

といった点で、「中世的な市民自治」が確立していた都市でした。

 

違い:どこから“自由”なのかがカギ

両者の違いはざっくりとまとめれば

 

  • 自由都市は、領邦(諸侯や司教)からも自由で、皇帝直属という立場
  • 自治都市は、諸侯や教会領に属しながらも、地域内で高度な自治権を認められていた都市

 

といった具合。

 

つまり、「自由都市」は神聖ローマ皇帝だけを上に置く特別な地位であり、「自治都市」はある領主の配下にありながらも自分たちで運営してた都市、という違いなんです。

 

自由都市とは?

神聖ローマ帝国においては「Reichsstadt(帝国都市)」と呼ばれることもありました。
この都市たちは、皇帝直属という超特別な身分を与えられた存在です。

 

特徴とメリット

「自由都市」あるいは「帝国都市」という立場でいることには

 

  • 皇帝に直接税金を納め、帝国議会に投票権(議席)を持つ
  • 領主による干渉が基本的にない
  • 経済的にも豊かで、商業・金融の中心地になることが多かった

 

などのメリットが存在しました。

 

しかしこの立場を手に入れるには、皇帝から「帝国自由都市」の勅許を得る必要がありました。

 

代表的な自由都市

都市名 現在の位置 特徴
ニュルンベルク バイエルン 帝国議会の開催地。皇帝の財宝を預かった都市。
アウクスブルク バイエルン フッガー家など大商人が活躍。自由都市として大繁栄。
フランクフルト ヘッセン 皇帝選挙・戴冠式の舞台。選帝侯が集まった都市。
ハンブルク ドイツ北部 ハンザ同盟の拠点。事実上の独立国家。
ブレーメン ドイツ北部 商業と航海の街。自由都市としての歴史が長い。

 

自治都市とは?

一方、自治都市というのは、完全には独立していないけど、領主から大幅に自立していた都市のことです。

 

特徴と立場

自治都市の特徴と立場を簡単にまとめれば

 

  • 所属する領邦(公国・司教領など)の配下にありつつ
  • 日常の行政、裁判、経済活動をほぼ自分たちで決定
  • 領主の許可を得て市壁・市章を持つことができた

 

といった具合になります。

 

ただし外交権や軍事権はほとんどない場合が多く、自由都市ほどの「対外的独立」はありませんでした。

 

代表的な自治都市

都市名 現在の位置 特徴
レーゲンスブルク バイエルン 当初は教会支配下だったが、徐々に独自性を強め自治を確立
ライプツィヒ ザクセン 経済の中核として発展し、高度な自治を持つようになった
トリーア市街 ラインラント=プファルツ トリーア大司教領内で、司教の支配下にありながらも、住民の自治意識が強かった

 

 

神聖ローマ帝国における両者の違い=権威と自由のグラデーション

自由都市と自治都市の違いは、実は「誰に対してどれだけ自由か」の問題なんです。

 

皇帝直属 vs 領主の支配下

  • 自由都市:皇帝直属、領主を“飛び越えて”いる
  • 自治都市:領主の領地内で自治している

 

自由都市は帝国議会でも独自の投票権を持っていたのに対し、自治都市はそういう“帝国の場での政治的発言権”はなかったケースがほとんどです。

 

“完全独立”ではなく“交渉の中の自由”

自由都市も自治都市も、完全に独立していたわけではなく、常に周囲の権力と交渉・調整を繰り返しながら自治を維持していたんです。

 

神聖ローマ帝国の自由都市と自治都市は、どちらも都市住民の力と交渉で勝ち取った「自分たちのルール」の象徴でした。
自由都市の方がより“国家っぽい”存在で、帝国の制度に組み込まれたプレイヤー。
自治都市はローカルの中で自立しようと奮闘した都市――
この違いを知ると、帝国のバラバラさとそれでも成り立っていた多様性が、もっと鮮やかに見えてきますよ。