
神聖ローマ帝国の中世都市には、商人や職人たちが集まって作ったギルド(Zunft)と呼ばれる団体がありました。ギルドはただの同業者組合ではなく、経済、社会、政治の各面で都市を動かす中核的な存在だったのです。
特に都市国家や自由都市では、ギルドに所属していないと商売も仕事もできないほどで、まさに「都市生活のパスポート」とも言えるような影響力をもっていました。
では、このギルドとは具体的にどんな組織だったのか?どんな仕組みで運営されていたのか?その成り立ちと歴史的背景まで、3つの視点から解説していきましょう。
まずは、ギルドがどのように成り立っていて、何のために存在していたのかを見てみましょう。
ギルドは、特定の業種(パン屋、鍛冶屋、仕立屋など)の職人たちが集まり、自分たちの仕事を他者から守るために作った排他的な組織でした。これにより、製品の品質や価格の安定を保つとともに、未熟な者や外部者の参入を制限することができたのです。
ギルドは社会保障的な役割も担っていて、病気や事故にあった仲間を助けたり、死者の葬儀を行ったりすることもありました。さらに、徒弟制度を通じて若者を職人として育てる教育機能も持っており、技術の継承の場でもあったのです。
つづいて、ギルドにはどんな種類があり、内部ではどのような役職が設けられていたのかを見ていきます。
ギルドには大きく分けて商人ギルド(Kaufmannsgilde)と職人ギルド(Handwerkszunft)の2種類があります。商人ギルドは都市の対外貿易や物流を支配し、職人ギルドは都市内の生産と販売を仕切っていました。
ギルドの内部には以下のような役職があり、運営が組織的に行われていました。
最後に、ギルドはいつ頃から生まれ、どのように発展していったのかを振り返ります。
ギルドの起源は、9~10世紀頃の西ヨーロッパ都市の成長にあります。商人や職人が集まって自衛的な組合を作ったのが始まりで、それが次第に制度化されていきました。
神聖ローマ帝国では、特に帝国自由都市においてギルドが大きな影響力を持つようになり、都市の政治にも関与するようになります。14世紀~15世紀には、ギルドが都市参事会(ラート)を構成し、“職人による都市政治”が広がった例も少なくありません。