「フランクフルト大聖堂」の特徴と歴史的意義|神聖ローマ建築史

フランクフルト大聖堂とは

フランクフルト大聖堂は、神聖ローマ帝国の皇帝選挙や戴冠式が行われた重要な宗教施設で、帝国の政治儀礼と深く結びついた象徴的な場所とされる。

「フランクフルト大聖堂」の特徴と歴史的意義|神聖ローマ建築史

ライン川支流マイン川の畔に広がる都市、フランクフルト・アム・マイン。近代的な高層ビルが立ち並ぶこの街の中心に、重厚な存在感を放つ赤茶色のゴシック建築がひときわ目を引きます。それがフランクフルト大聖堂──正式名称聖バルトロメウス大聖堂です。


この大聖堂、ただの教会ではありません。神聖ローマ帝国の時代、皇帝が選ばれ、戴冠した場所として特別な地位を持っていたのです。つまり、ここは政治と信仰が交差する、帝国の“儀式の舞台”でもあったわけですね。


今回はそんなフランクフルト大聖堂の建築様式、構造、歴史、そしてちょっとした小ネタまで盛り込んで、じっくり解説していきます。



フランクフルト大聖堂の建築様式

ひと目見ただけで印象に残る赤茶色の外観。そこには、この地ならではの素材と、ある時代の建築思想が色濃く反映されています。


ゴシック建築の典型

フランクフルト大聖堂は、14世紀以降に建てられたゴシック様式の建築です。尖塔垂直性の強調細やかな装飾が特徴で、高く細長い窓やリブ・ヴォールト天井が空間に神秘性と荘厳さをもたらしています。素材には赤い砂岩が使われていて、この地方の教会らしい色味になっているんです。


19世紀の修復と再建

大火や戦争による損傷を受け、何度も修復されてきたこの大聖堂ですが、現在の姿の大部分は19世紀に再建されたもの。中世の様式美を継承しつつ、当時の技術と美意識が反映された「ネオ・ゴシック的」要素も一部に見られます。


フランクフルト大聖堂の内部構造

外観の堂々たる佇まいに負けない、緻密で儀礼的な内部空間──そこには「皇帝を選ぶ聖地」としての設計思想が刻まれています。


堂内の身廊と天井構造

堂内の身廊は3廊式で、中央の高いヴォールト天井が印象的。光が高窓から差し込むことで、神の恩寵を象徴する演出がなされています。列柱の間隔や導線も、行列や儀式が行いやすいように考えられているんです。


選帝侯たちの集う「帝国の間」

もっとも重要なのが、15世紀以降神聖ローマ皇帝の選出戴冠式がここで行われたという点。選帝侯たちはフランクフルトに集い、この大聖堂の中で厳粛な手続きを踏んで次期皇帝を選びました。つまり、単なる宗教施設を超えて、「帝国の政治的神殿」としての役割を担っていたんですね。


フランクフルト大聖堂の場所と歴史

大聖堂はなぜフランクフルトに?そして、なぜここで皇帝が選ばれたのか?その背景には、地理と歴史の絶妙な交差点がありました。


帝国都市フランクフルトとの結びつき

フランクフルトは、中世から自由帝国都市として特別な自治を認められ、経済的にも政治的にも大きな影響力を持っていました。神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世によってその地位を保証されて以降、帝国の中核都市として栄え、皇帝選出の舞台となったのです。


皇帝選出と戴冠の歴史

1356年の金印勅書で、皇帝選出の地としてフランクフルトが正式に定められたことにより、フランクフルト大聖堂は“帝国の儀式の中枢”として地位を確立しました。以後、1806年の帝国解体まで、数多くの皇帝候補たちがここで選ばれ、戴冠したのです。


余談:300段以上!?尖塔の階段を登る

この大聖堂の高さは約95メートル──けっこうな高さです。そしてこの塔、なんと328段のらせん階段を登ると、頂上の展望台に出られるんです。上からは、マイン川やフランクフルトの街並みが一望できて、まさに「帝国の視点」を体感できる絶景スポット。


息を切らしながら登るその階段もまた、ちょっとした“信仰の試練”みたいなものだったのかもしれませんね。


「フランクフルト大聖堂の特徴と意義」まとめ
  • ゴシック様式の荘厳な聖堂:赤砂岩と垂直性が象徴的な建築美を生み出した。
  • 皇帝選出の儀式空間:選帝侯による選挙と戴冠がここで行われていた。
  • 都市と帝国をつなぐ舞台:フランクフルトの地位向上と帝国儀式が連動していた。
  • 再建を経たネオ・ゴシック的構成:19世紀の修復で現代にも引き継がれた威容。
  • 尖塔から街を見下ろす展望台:328段の階段で帝国の“目線”を体験できる。